酒を呑みながら

引退したエロ絵描きの日々あれこれ

描きも描いたり

仕事で絵コンテをよく描いた。
絵コンテについて簡単に説明すると、シナリオから必要なシーンを抜粋し、その画面レイアウトやキャラクターのポーズなど、文章のイメージを実際にラフな絵を描くことによって具現化する、言わば設計図のようなものである。
これを元に正規のレイアウトを起こし、原画が描かれ、パソコンに取り込んで着色するというのが仕事の流れである。

この絵コンテを今までに20本ほど描いただろうか。
一作品に必要な絵の枚数はだいたい100〜300。いくらラフな絵とはいえ、これだけでも単純計算で3000カット以上描いたことになる。ボツになったものを含めればその数は倍になるだろう。
これに原画や着色、その他もろもろをプラスすれば、仕事で描いた絵は軽く一万枚を突破する。我ながらよく描いたものだ。
もっとも、下っ端のアニメーターになると月に1000枚は描かないと普通の生活ができないというから、それに比べれば私の仕事などぬるま湯に浸かっていたようなものだ。

さてこの絵コンテ、実際に原画となったときに、描き手の力量や個性によって必然的にコンテとは多少違ったものになる。しかしそれは、コンテのイメージを自分なりに膨らませた結果であって、決してコンテをないがしろにしたものではないのだ。
ところがある作品で、私が描いた300カット余りのコンテを、完全に無視されたことがあった。
その原画マンは実力的にいえば私など足元にも及ばないが、それとこれとは話が別である。
独善的で都合が悪くなるとすぐ泣く担当ディレクター(♀)は、原画マンに直接レイアウトを描かせ、二人だけでどんどん作業を進めていった。
私のコンテが完璧だなんて自惚れは毛頭ないが、では何故一ヶ月も私にコンテを描かせたのだ。その間に途中経過も提出しているのだから、何度でもリテークを出すなり作業を中止にするなりのチャンスはあったはずだ。完成してから「やっぱそれいらないや」とは何事だ。他にも仕事は山ほどあるのだ。私の一ヶ月を返せ。
これは間接的な横領罪だバカヤローッ!!

……いかんいかん、ちょっと熱くなりすぎた。
案の定、先を見ずに突っ走った女ディレクターは、スケジュールをメチャクチャに荒らしたままその籍を追われた。
残された原画マンは実力こそ折り紙付きだが、ペースが異常に遅いため、その尻拭いを随分とやらされた。
最後には彼の絵を真似てニセモノの原画まで描いたのだ。

彼の絵を目当てで買ってくれた人、騙してごめんなさい。

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