先日、ある女性からこんなメールが届いた。
【自殺しようとして大量に薬飲んだけど三日後に意識もどしちゃった。悪運悪いあたし…】
彼女はどんなつもりで私にこのメールを送ったのだろうか。
事の真実はともかく、チャットやメールで散々話し、一度だけだが実際に会ったこともある彼女は、本当にそういったことをやりかねない雰囲気が確かにあった。
私は少々腹が立った。
少なくとも私に救いを求めているわけではあるまい。
厳しく言えば人恋しさに甘えているとしか思えず、悲劇のヒロインである自分を誰彼なく発表したいのだろう。
そうは言っても、死の匂いに対して茶化すことも見放す度胸も、生真面目に語り諭す度量もない私は、こう返信した。
タイトル【まったくもう】
本文 【なにやってんだあんたは…^^; 人生はこんなにも楽しいのに】
まあ楽しくないから死のうと思うのだろうが。
彼女とはここ暫くまったく連絡を取っていなかった。新幹線が必要なほど住まいが離れていることもあり、自然とお互いの連絡は途絶えるようになっていた。
一度彼女と会ったことには多少の理由があった。
詳細は避けるが、以前彼女はネットでの関係に対して失望し、自暴自棄になったことがあった。
「人なんか信じられない」と荒れる彼女。
その原因となった男と、私は何度も酒を酌み交わしており、彼の主張には大いに共感していた。しかし確かに軽率だった彼の落ち度は落ち度として、なんとか彼女の人間不信は払拭したかった。
「そんなことねえよ。ネットの世界にだって信用できる人間もいる」
「嘘ばっかり。信用しても裏切られるだけだよ」
「俺も信用できないのか?」
「まさしは……でもわかんない」
「わかった。じゃあ本当に会いにいくよ」
新幹線を使ってまで会いにいって、それで自分に何かができるとは思わなかったし、何が変わるとも思っていなかった。だが“わざわざこんな所まで会いに来てくれた”ということで伝わるものがあるのではないかと思った。
彼女は若く、ルックスも写真を見るかぎり並以上だったが、もちろん私に妙な下心などなかった。嫁にも「こんなヤツがいるからちょっと会いに行ってくる」と話して交通費を出してもらった。
当日、その地では駅前のビジネスホテルに宿をとり、初対面の彼女と居酒屋で他愛のない話をした。
ただそれだけだった。
俺にそんな哀れみを誘って同情を買うようなメールなんか出すな。
寂しいなら、辛いなら素直にそう言え。
本当に駄目なら、新幹線代ぐらいは何とかして、やっぱり何ができるわけじゃないけど、抱きしめてやることぐらいはできる。
なんて、綺麗事を望んでるわけじゃないんだろうけど。

